「届けてくれる？」

　　＜届けてくれる？＞

しばらく会わなかった人が訪ねてきた。

きれいにお化粧してお出かけ用の服装で・・・・

ハンドバックまで下げて・・・・

「どうしたの？」と尋ねると彼女は一人で笑い出した。

もう一度「どうしたの？　どこかへお出かけ？」と尋ねた。

お昼前の時間だ。

「一緒に食べようよ」と彼女は某有名店の袋を差し出した。

中にはおいしいおにぎりが入っているに違いない。

差し出しておいて尚もウフフフ・・ハハハハ・・・と笑っている。

お茶を淹れて食べ出したら「あのね・・」と言ってまた笑う。

ご主人が「フロッピーを忘れたから届けてね」と電話をかけて来たそうだ。

彼女は昼からの会議に間に合わさなければならないので急いで

化粧をして着替えて出かける用意をした。

「さぁ､でかけよう」と思ったらまた電話がかかってきた。

「まだ届かないんだけど・・・・」と・・・・。

彼女は「今から出かける所なの」と答えると、

「僕ね､君に何の為にパソコンを教えたと思う？」と言われたそうだ。

そして彼女はまたお腹をかかえて笑い出した。

「そうなのよ。　パソコンにフロッピーを入れてメールで届けたらいいだけだったの」

私は口にほお張った物が飛び出しそうになった。

バカらしくなって､そうかといってそのまま普段着に着替えるのもシャクだから

お昼ごはんを買って私の所に来たと言ってまた笑った。

鬱陶しい梅雨の合間のほほえましく､目の前が明るくなる笑いを頂いたひと時だった。

ごちそうさま～～～～